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2009年7月24日金曜日

み~んな家族


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 小さな男の子に、「ぼく、いくつ。」とか「ぼく、名前は?」と聞いたりする。もちろん、この「ぼく」は話し手ではなく、男の子を指している。一人称の代名詞を呼称に用いているのは、視点(立場)を男の子に置いているからだ。
 タイ語の呼称について、少し考えてみよう。上の例の「ぼく、いくつ。」をタイ語で言うとどうなるか。おそらく、「ぼく」を「ネズミ」に換えて、「ネズミ、いくつ。」とすればよい。ヌウ(ネズミ หนู )は子供や女性が自分を指すときの呼称であり、親や先生、年配の人が子供や若い人を呼ぶときの呼称でもある。ヌウ普通名詞だが、「視点」の考え方からすれば、日本語の「ぼく、いくつ。」と同じということになる。
 タイ語では、ピー(兄, 姉 พี่ )を目上の人に対する呼びかけ、ノーン(弟, 妹 น้อง )を 目下の人に対する呼びかけに遣う。面白いのは、必ずしも実際の年齢にこだわる必要がないということだ。相手が年下だと分かっている場合でもピーと呼ぶことがままあり、その結果、二人でピー・ピー言い合うことになる。
 デツ(ク)( เด็ก )は「大人」に対する「子供」、ルー(ク)( ลูก )は「親」に対する「子供」であり、血縁関係があるかないかで区別する。しかし、このルークも、血縁関係のない子供に対する呼びかけに遣われるのだ。小さな子供に対してだけでなく、老人が成人に対して遣ったりする。これは、婚姻関係があるなしにかかわらず、フェーン(恋人; 配偶者 แฟน )を用いるのと通ずるものがある。
 タイのホラー映画で、在家信者が僧に対してポー(父親 พ่อ )と呼びかける場面を一度ならず見た。[注: タン(あなた; あの方 ท่าน )と呼ぶのが無難なようだ。]
 呼称に血縁関係のある語を遣うというのは、村を単位とした共同体意識、同族意識の強さが言葉に反映したものなのかもしれない。日本人の私にはそれほど違和感がないのだが、どうだろうか。

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